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黄昏睡蓮

猟奇系、グロ系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。毎日更新を目標にしています。

食人病1

 食人病という恐ろしい病があります。
 いえ、正確には恐ろしかった病がありました。

 その病気が発言すると、その患者は人が食べたくて食べたくて仕方なくなります。その衝動は自分にとって大事な人間相手なら人間相手なほど高まり、昔はよく恋人を食べてしまうという事件が多々ありました。食人病になった人は速やかに処理されるのが常で、世界でも恐ろしい病気の一つに数えられていました。
 ですが、いまでは違います。色々な技術が進歩した現在、食人病の人を合法的に満足させられるようになったからです。
 ですから、私の恋人が食人病にかかった時も、全く怖くありませんでした。


 私は朝目覚めると、まずご飯の準備をして、大体の準備ができると自分の両腕を切り落とします。自分で自分の腕を切り落とすことは出来ませんから、特注で用意した小さなギロチンのようなもので一気に両腕を落とします。肘くらいの位置で切ってしまっったので、指を使った作業が出来なくなってしまいした。
 毎朝のことですが、この両腕がなくなったあとはなんとも言えない虚無感があって、なんともいえない快感です。
 血は止まるまでボウルに溜めておきます。血が止まったら彼を起こしに行きます。
 両腕がないので揺り起こすことは出来ませんが、私達の間で朝の挨拶はキスと決まっているので問題ありません。
「あなた、起きてください。朝ですよ」
 頬にキスをしながらそう語りかけます。彼は目を瞑ったまま、嫌そうなうなり声をあげます
「うー……あと五分……」
 朝が弱い人なので仕方ありません。でも早く起こさないと遅刻してしまうので、急いで起こします。
「ほら、こっち見てください。……はむ」
 反対側を向いている彼の耳を甘噛みして、こちらに顔を向けさせます。こちらに向いた彼の唇にすい尽き、舌で無理矢理彼の中へと入り込んでいきます。
 反応は劇的でした。
 かっ、と目を見開いたかと思うと、いきなり大きく口を開け、彼の口の中に入り込んで舌がさらに奥へと導かれます。そして、容赦なく舌が噛み千切られました。半ばから舌が喪失し、気が遠くなるような激痛によって、背筋に電流が流されたかのように体がびくびくとふるえます。この時には私の体は彼の力強い両腕でめきめきと締め上げられていて、その痛みに逝ってしまいそうになります。
 彼は私の舌から溢れ出る血を飲みながら、徐々に力を強めていきます。私は頭もがっちりホールドされているので彼から少しも離れることが出来ず、絞め殺されかけます。
 そのぎりぎりのところで、彼が目覚めます。
「あー……おはよう」
 最後に私の頬をぺろりと嘗め、彼は私を解放します。呼吸すらも難しかった状態から一気に通常の状態に戻され、私は名残惜しいやらいっそ殺してほしかったような、そんな感覚になります。
 舌が半分になった状態ではうまくしゃべれませんので、私は頭全体を使って彼をリビングの方に促します。彼は私を抱き上げ、リビングの方に向かってくれました。本当は立てないこともない位の状態なのですが、いつも彼はリビングまで私を運んでくれます。
 それは彼の愛情の深さを表しているようで、私にとってこの時間は至福の時間でした。
 リビングにつくと、彼は私を広い食卓の上に載せます。別に私自身を食べる訳ではありません。いえ、ある意味では食べるのですが、私全体は食べません。単にこれは演出上の問題です。
 彼はキッチンに入ると、私の両腕と血の溜まったボウルを持ってきました。私の右手をかじりながら、です。私はそんな彼を睨みつけます。
(歩きながら食べるなんて……行儀が悪いですよ!)
 彼はそんな私の目を見て意図を読みとり、苦笑を浮かべます。
「ごめんごめん。あんまりおいしそうだったからさ……」
 そんな風にごまかしても許しません。私は早く席に座るように彼を促します。
 彼は私の前の席に座ります。食卓にあがっている私を嬉しそうに見てから、両手を私に向けて合わせました。
「それじゃあ、いただきます」
(どうぞ、召し上がれ)
 
 
~続く~
[ 2013/07/16 22:59 ] 小説・短編 食人病 | TB(0) | CM(0)

食人病2

 彼はまずさきほどちょっとかじっていた私の右手から食べ始めました。特に調理を何もしていない生人肉ですが、新鮮なものはそれだけでも十分食べられます。まあ、食人病の人以外の人が食べるのは無理だと思いますが。
 食人病の人は歯や顎が異様に発達し、その力も大きく向上しています。昔は兵士として戦争にかり出されることもあったという話ですが……それはまあいいでしょう。とにかく、人を食べるために体がつくり変わっているので、問題なく人肉も食べられるのです。
 ばりばりと二の腕辺りが骨ごとかじり取られました。もう神経はつながっていないのに、思わず体が震えてしまうのは仕方ないというものでしょう。数分前まで私の一部だった体が彼に食されていく。こんな幸せは他にありません。
 次に彼は血を飲んでいきます。普通、人の血というのものはすぐに凝固してしまってろくに飲めたものではないのですが、私の流す血は体に流れていなければただの水とそう変わりがないものです。むしろ、体から離れない内は普通の血に近いですが、離れて暫くすると普通なら凝固するところが逆に水に近づくという感じです。色的にはトマトジュースですが、どちらかというとスポーツドリンクの方が食感は近いらしいです。
 自分で自分の血を飲むことはありませんので、あくまで彼が言っていた内容によるのですが。
 彼はまた右手に戻り、今度は指を噛み千切ります。小指が一番おいしいらしく、彼はいつも親指の方から食べて小指の方へと向かいます。すっかり指がなくなってしまった私の手は、なんだか奇妙な形になってしまいました。指がなくなっただけだというのに、おかしな話です。
「うーん、やっぱり小指はうまいな……鳥の軟骨みたいなこの食感がたまらない」
 こりこり、バリバリ、ぐちゅぐちゅ。
 彼はすっかり指を平らげてしまうと、手のひらを丸ごと口に入れ、手首のところで噛み千切ってしまいました。さすがに一度に口にいれた分がちょっと大きかったのか、租借しにくそうにしていた。
「むぐ……もむぅうむ」
 その状態で喋ろうとするので、私は少し怒って口を開きました。
「行儀が悪いですよ。ちゃんと飲み込んでから喋ってください」
 私の言葉を聞いて、素直に口の中のものを完全に飲み込んでから彼は改めて口を開いた。
「ごめんごめん。……けど、もう舌治ったの?」
 私は赤い舌をぺろりと出して見せました。彼は感心したように唸る。
「早いな……前はもっと時間かかってなかったけ?」
「何度も繰り返すと細胞が馴染んでくるみたいです。特に口の中は元々治りやすい箇所ですしね」
 さすがに腕はそんなに早く治らないのですが。
「ところで、そろそろ急がないとまずいのでは?」
 私がそう時計を見るように促すと、彼は目を見開いて慌てました。
「やっべ、今日朝一で会議なんだった!」
 慌てて彼は残った私の右腕を食べると、ボウルの血を飲み干し、左腕を布でくるんで鞄につっこんだ。あんまり乱暴に扱われるとさすがに愉快な気持ちにはなれない。
「きちんと食べてくださいね。前みたいに残したりしたら承知しませんから」
「いや、あのときは暑かったからちょっと腐っちゃって……ごめんなさいなんでもないですその目はやめて怖い」
 少し力を込めて睨むと、彼はすぐに謝ってくれた。どうも私は目力があるみたいで、彼はそんな私の目が怖いらしいのです。
 正直怖がられるのは本意ではないのですが、彼が反省してくれるのならばよしとしましょう。
 私は腕が使えないので転ばないように注意しながら、食卓の上から降りました。
「早めに帰ってきてくださいね」
 玄関まで見送りにいくと、彼は出て行く前に私に軽くキスをした。さすがにこのときは何もしない。唇くらい噛み取られるかと思ってたけど。
 彼は笑顔で玄関を開ける。
「わかってるよ。それじゃあいってきます」
「いってらしゃい」
 彼が出て行った後、私はキッチンに戻り、自分用に用意しておいた朝食を口にします。
 それは全部手が使えなくても食べれるようにしておいたもので、ストローで飲めるようになっています。特別にエネルギーが大量に含まれていて、これを食べることでさらなる再生を促すことが出来ます。
 少し再生しつつある腕を見て、私はため息を吐きました。
「……うーん。まだまだ足りないなぁ」
 彼は本来結構な大食漢でした。食人病になると食欲を満たすことが出来るのは人の肉だけになってしまいます。普通の食材も食べられなくはないのですが、やはり人肉を食べるのが一番いいのだと言われていました。
 一般的に食人病の人が一日に必要な食事量は一人分らしいですが、大食漢な彼は一人分じゃ満足できないのがわかっています。本人は食べられるだけ幸せと言ってくれますが、私としては彼がおなかいっぱい食べてくれれば嬉しいです。
 ですので、私は再生力に磨きをかけることにしているのです。そうすれば、彼がいくら食べても大丈夫ですし。
 とりあえず、私は両腕が生え揃うのを待って、今日の家事を行うことにしました。


~続く~
[ 2013/07/17 20:00 ] 小説・短編 食人病 | TB(0) | CM(0)

食人病3

 現在の世界環境において、食人病に対する理解はとてもあります。
 そのため、私のように食人病の彼に「一番食べたい相手」として指定されると、彼を満たすという大義を果たすために、普通に働いているのと変わらない金銭を得ることが出来ます。もちろんその代わりに彼はある程度強制されて職業につかなければならず、国のために勤めることが義務だとされています。食人病の人達は普通の人とはちょっと違う体のつくりや丈夫さを利用して、彼らにしか出来ない仕事を行っているらしいです。
 それはさておき、私は彼の食人指定によって色々と恵まれた立場にいますが、それゆえに私はそれに甘んじるつもりはありませんでした。家事など直接的に彼のためになることをしている時以外は、大抵自分のスキルを磨くために時間を費やします。もちろんこの場合のスキルとは自分のためのスキルではありません。
 私は美味しい人肉の料理の仕方を学ぶため、週一回の『食人指定主婦の会』に参加しています。そこでは私と同じように食人病の人に『食人指定』された人達が集まって情報交換や交流を続けています。
「こんにちはー」
 公民館に顔を出すと、たくさんの人が出迎えてくれました。
「あら、こんにちは。今日も暑いわねー」
「奥さん聞いて聞いて? この前、太股の肉を揚げてみたんだけど……」
「やっぱりドレッシングは血とマヨネーズを混ぜた赤マヨネーズよねー」
「髪の毛って美味しい食べ方あるのかしら?」
 食人指定されている主婦ならではの会話が当たり前のように交わされています。この場所に来る度、私は皆が生き生きとしていて幸せそうだと感じていました。
「そういえばこの前、主人がお弁当で持たせた腕を腐らせちゃった時があって……その部分残して帰ってきたんですよ。ヒドいと思いません?」
 私がその話を振ると、皆は一斉に憤ってくれました。
「それはヒドいわ! 食人病の人は体が丈夫なんだから、少しくらい腐ったって平気なのにね!」
「人の肉を大事にしない人なんて、私だったら別れちゃうかも……」
「私なら暫く腐った肉しか出さないわ」
「……うちの人は腐ったくらいが丁度いいって」
「この時期、お弁当に包むのでも、考えないといけないわよねえ。保冷剤とか一緒にくるむとか……」
「けど、そうすると肉の味が一気に落ちるのよねぇ、やっぱり」
「塩漬けにするとかどう?」
「焼いておくとか」
「いえ、いっそ揚げちゃうとか?」
 わいわいと話を続けます。やっぱり仲間っていいなぁ、と私は思います。
 その後、体の一部が欠損しても出来る調理の仕方や、肉の味を損なわない味付けの仕方などを学んで、私達は話を続けた。
「それじゃあ、今日は一人分の材料を丸ごと使った料理を試してみましょうか」
 リーダーの人の合図に従い、私達は今日の実践を始めました。
 用意するのは新鮮な人間肉一人分。人間肉というのはまだパートナーを見つけていない食人病の人が食べる用に提供される食材であり、人間そのものです。ただしもちrん普通の人とは違い、食べるように繁殖された人間で、その味や食感は牛に近いものがあります。
 リーダーの人がつれてきたその人間肉は、まだ小さな個体でした。
 
 
~続く~
[ 2013/07/18 20:00 ] 小説・短編 食人病 | TB(0) | CM(0)

食人病4

 きょとんとした顔つきでリーダーの人に連れられています。
「今日の提供品はこれです。ちょっと小さいですが、大きい物は単にこれを応用するだけでいいので簡単でしょう。それでは始めます」
 人間肉に対してリーダーは机の上に上がるように指示します。逆らうことを覚えていないその人間肉はおとなしく机の上に上がり、寝転がりました。リーダーは大きな斧のようなものを持ってきます。
「バケツを準備しておいて。結構な量の血が出ますから大きめのを」
 人間肉を机の端から頭が出るようにうつ伏せで寝かせ、私達はその周りに集まってからだを抑えつけます。バケツは人間肉の頭の下に置きました。
「よーし、それじゃあ、逝くわよー」
 リーダーは気負いのない様子で斧を振り上げ、そして打ち下ろします。
 人間肉の首は案外あっさりと切断され、そのまま下におかれていたバケツに落下して大きな音を立てました。噴きだした血がどんどん流れ、そのバケツに溜まっていきます。自分自身の血に沈むことになった人間肉は、もはやぴくりとも動きません。切断された直後は脊髄反射か何かわかりませんが体の方はぴくぴく動いていたものですが、いまではすっかり沈黙してしまいました。
 リーダーの指揮の元、私達は人間肉を調理しながら言葉を交わします。
「まず足ですね。両方とも切断してしまいましょう」
 先ほど首を跳ねた時に使った斧を使用して人間肉の両足を切断します。これだけでも一人でやろうとすると十分大変ですが、さすがに仲間がたくさんいる状況だとサクサク進めることが出来ます。
 二本の足は輪切りにして、そこからさらに飾り切りなどで分割してから更に並べます。大皿の上がお花で飾り付けたように賑やかになりました。
 それから次は腕です。肩口から落として肘、手首と三等分します。
「手のひらの部分は好きな形を作らせて置いてください。もし何かしらの大事な日であればグーサインなどがいいでしょうね」
 どんどん調理は進んでいき、次は内蔵でした。腹筋を避けて刃を入れ、中身を引っ張りだしていきます。
 肝臓や膵臓をスライスしておき、胃は丸ごと置きます。人間肉の中には何も入っていないけどもし自分たちを調理する時は事前に体の中は綺麗にしておかなければならないと注意を受けました。
「食べたあとのものなどがあるとさすがに臭くなってしまいますので、もしも急な食事の時は、思い切って胃や腸は捨てた方がいいでしょう」
 子宮を摘出します。卵巣も一緒についてきました。
 卵巣は切り取って子宮の中に詰め込んでしまうようです。
「この辺りは一緒に食べた方が美味しいですからね。卵子がよく作られていると味に深みがでるので、調理する日は、排卵日を避けた方がいいでしょう」
 内蔵をほとんど調理し、体はほとんどばらっばらになりました。あばら骨も肉がついたまま油でからっと揚げ、非常に香ばしい匂いが漂い始めます。
「さて。背骨の中にある脊髄は非常に食感のいいものですので、かき出しておいてゼリーのようにして出しましょう」
 透明で涼しげな器に脊髄が盛られました。
 最後にこれまでに調理したすべての器官を大皿に並べ、人間肉一人分づくりの完成です。
 思わず全員で拍手をしてしまったほど、大変な作業になりました。
「いやー、作った甲斐があるわね!」
「中々難しいですね……」
「一人じゃできないし、本当に特別な日に皆に頼んでやってもらうしかなさそうね」
「そういえば頭はどうしたんですか?」
「ここにあるわよ。丸ごとニンゲン用ミキサーにかけたの」
「うわっ、贅沢ー」
「目玉の食感が好きって言う人もいるから、それは別にしてるけど」
「わー、すごい」
 賑やかに話し合っていた私達だけど、ふと皆が気になっていたことを口にする。
「あの、ところでこの肉誰が食べるんですか?」
 食人指定を受けている私達は当然皆食人病ではない普通の人間です。つまり人肉は食べられないのです。
 まさか丸ごと無駄になってしまうのでしょうか?
 私達がリーダーを見ると、リーダーはにっこりと笑いました。
 
 
~続く~
[ 2013/07/19 20:00 ] 小説・短編 食人病 | TB(0) | CM(0)

食人病5

「もちろんそんな無駄なことはしませんよ。今日は――」
「しっつれーいしまーす。おっ、すげえ上手そうな料理が並んでますね!」
 公民館の中に、一人の青年が入ってきました。その隣にはなぜか同い年くらいの女性もいます。
 他のメンバーが戸惑っていると、リーダーは二人の側にいって私達に紹介してくれます。
「紹介するわね。こちら、つい先日食人病と診断されたご兄妹なの」
「え?」
「いやー、そうなんすよー。まさか自分がそんなのになるとは思っていなかったんでびっくりしゃったっすよー」
 青年の方はどこまでも軽い人でした。対照的に妹さんの方はその背に隠れてしまっていましたが。
「色々と手続きがややこしくて、仕事とかも中々回ってこなくて。まだ俺もこいつもパートナーがいなくていつも味気ないパックの人肉ばっかり喰ってましてねー。今日はごちそうがあるっていうんで図々しくも来ちゃいました!」
 ノリは軽いけど、憎めない人だと感じます。
 テーブルの側に近づいてじゅるりと舌なめずりをしていました。
「で、食べちゃってもいいんすよね?」
「もちろんどうぞ。妹さんもどうぞ遠慮せずに」
「……い、いただきます。ごめんなさい」
 なぜか謝る妹さんでした。リーダーは優しい笑顔を二人に向けてから、私達の方を向きます。
「さぁ、二人が食べてくれてる間に、私達は調理に使った道具や場所を掃除しましょう」
 そのリーダーの号令に従って、私達は片づけを始めます。
 片づけながらちらりと様子をうかがうと、青年の方がガツガツと美味しそうに食べまくっていました。
「うめえ! さすが新鮮な人間肉の作りは違うなー! おい、これ食ってみろってすごく美味いから!」
 うまいとすごいを連呼しながら青年は妹さんの前に美味しかった部位を差し出します。妹さんの方は戸惑いながらも、それを食べて「おいしい」と小さくですが口にしていました。
 なんだかすごく対照的な兄妹でした。
 それにしても、と私は仲間にこっそり話しかけます。
「女性の食人病患者って珍しいですよね」
「え? ああ、そうね。基本食人病にかかるのは男性の方が多いからねー。でも、皆無じゃないし、きっと仕事場なら仲良くなれる同類もいるんじゃないかしら」
 控えめな様子で大腿骨をかみ砕いている妹さんを見ながら、私は変わった境遇に置かれた彼女が少し不憫に思えました。


 その晩のことです。
 言っていた通り早めに帰ってきてくれた彼とのんびりと絡み合いながら、私は彼に訪ねていました。
「そういえば、あなたが行っている仕事場に女性の食人病患者さんはいらっしゃるんですか?」
「ん? いや、いないね。女性の食人病患者って珍しいし」
 あっさりと答えた言葉に、私は少しほっとします。そのあからさまな安心は伝わってしまったようでした。
「あれ? もしかして浮気心配されてた?」
 図星でした。同様を押し殺して答えます。
「いいえ、そんなまさか」
「そういう割には……」
 ぐっと握りしめられて、一瞬気が遠くなります。
「心臓の鼓動がやけに早くなったけど?」
 私はぐうの音も出ませんでした。私の胸を貫いて心臓を鷲掴みにしている彼はにやにやと少し品のない様子で笑っています。
「ばっかだなぁ。俺はこんなにもお前が好きなのに」
「…………心臓を鷲掴みにするほど?」
「そう。お前のハートは俺の物、ってか?」
 さらにぐぐっと力が込められ、私の気が遠くなります。彼は相変わらず楽しげでした。
「これはちょっと、俺がどれくらいお前を愛しているか伝えないといけないかな……食人病ならではの方法で」
「……全部食べちゃだめですよ」
「しないよ。したいけど。……っていうかもしかして全部食べられるのはいやなの?」
 ちょっと哀しそうに彼は眉を八の字に曲げます。私は即座に応じました。
「いいえ。別に食べられてもかまいませんが、それは法律で禁じられています。脳を全部食べられると再生ができなくなりますし、それでなくても記憶の混濁が起きますし、困るなぁというだけです。だから私は「いや」ではなく「だめ」だと言ったのです」
 その辺りの微妙な機微は彼に通じなかったようですね。
 そうして説明をすれば彼もはっきりとわかったらしく、嬉しそうに笑ってくれました。
「じゃあ、それだけ気を付けて、君のことを食べれるだけ食べてあげる」
 額にキスを落とされる。私は情熱的にすぎる愛の言葉に顔が赤くなるのを感じながら、全てを彼に委ねます。

 そして、私は今日も食べられるのです。
 
 
~食人病 終わり~
 
 
[ 2013/07/20 20:00 ] 小説・短編 食人病 | TB(0) | CM(0)
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