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黄昏睡蓮

猟奇系、グロ系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。毎日更新を目標にしています。

殺人プレイ『聖殺』 1


 双子ちゃんの突然の来訪から早数ヶ月――僕とまりかさんは相変わらず一緒に生活していた。
 すっかり共同生活にも慣れ、少しずつまりかさんの持ち物も増えていき、気付けばほとんど同棲しているのと変わらない状態になっている。
 僕としては思う存分プレイが出来るし、まりかさんは人形サイズで活動すれば極端に消費を抑えられるから、精神的にも金銭的にも全く問題ないのだけど、違う点がそろそろ心配になってきた。

 つまり、まりかさんはずっとここにいてくれるのか、という話だ。

 僕とまりかさんのいまの関係は、とても曖昧だ。
 家族ではないし、友達、というのも少し違う。
 端的に言えば、同好会の仲間ということになるのだけど、その言葉で括るには僕の中でまりかさんの存在は大きくなりすぎていた。
 つまりどういうことかというと。
(告白、したいなぁ……)
 曖昧な関係性に終止符を打ち、堂々と「自分はまりかさんの恋人だ」と言える存在になりたい。そんな風に思うようになっていた。
 ただ、まりかさん側がどう思ってくれているのかはわからない。
 身体を委ねてくれているのだから、少なくとも嫌われてはいないと思う。殺人プレイの相方として、相応に信頼はされているはず。
 けど、それと僕と同じ気持ちになってくれているかどうかとは、全然別の話だ。
 向こうにしてみれば理想通りに自分を殺してくれる相方、以上の感情を抱いていないかもしれない。
 彼女の気っ風のいい性格はとても気持ちが良く、同好会内だけで考えてもファンが多い。
 まりかさんなら相手に事欠かないだろうし、よりどりみどりだろう。そんな彼女に唯一無二のパートナーに選ばれる自信は、僕には無い。
(誰かに相談したいな)
 情けない話だと自分でも思うが、僕はそう考え、相談候補をあげてみた。出来れば僕のこともまりかさんのことも知っている共通の知り合いが好ましい。
(双子ちゃんは……やめとこう。なんか嫌な予感しかしない)
 盛大にからかわれることは想像に難くない。
(僕の友達はそもそも殺人プレイのことも知らないしなぁ)
 昔ほどの偏見はなくとも、割とマイナーな趣味なので黙っているのだ。無闇に人にいうことではないから、これは間違ってはいない。
(……同好会の会長は……なんか、双子ちゃんと同じ気がする)
 大人の男性だし、真剣に相談に乗ってくれそうではあるけど、根本に双子ちゃんと同じ匂いを感じるのだ。相談したら何年も肴のネタにされそう。
(と、なると……)
 候補はもう何人もおらず、その中でも一番口が硬くて信用できる人に頼ることにした。


「……話はわかったが、俺にそんな話を持ってきたのはお前が初めてだ」
 同好会で用いる様々な道具類を作成している職人のマサネさんは、真面目な顔でそう呟いた。
「ごめんなさい……」
 いま、僕もなんで マサネさんに恋愛話を相談しようと思ったのか自分で自分の頭を抱えているところだ。
 確かに信用は出来るし、口は硬いし、からかってきたりする人ではないのは確かだけど。
 告白するしないの恋愛話を持ちかける相手としてはあまりにもあまりな人だった。
「やっぱりいいです。お騒がせしました!」
 どうしようもなく恥ずかしくなって逃げようとした僕の肩を、マサネさんが掴んで止める。
「まあ待て。まずは落ち着いて茶でも飲め」
 そう言われると逃げ出すのも悪いので、大人しくお茶をごちそうになった。
「お前たちは同好会の中でもレアな特徴を持つふたりだ。そういう意味では、慎重になるのは間違っていないし、同好会の仲間に相談するのも正しい」
「……あー、そう、ですね」
 実はそれもちょっとは思っていた。
 もし告白して失敗したら。逆に成功したとしても、同好会の活動に参加がし辛くなったり、参加が少なくなったら、同好会の損失になる。
 一応色々と販売とかもしている集まりだし。その中でも、確かに僕とまりかさんのプレイは結構な売れ筋みたいだし。詳しくは知らないけど。
「そのあたりも踏まえて言うがな――さっさと想いを伝えてこい」
 ずばりと言われ、思わずお茶を零すところだった。
「え、ちょ、マサネさん!?」
「何を驚いてるんだ? むしろ、それ以外の選択があるのか? 同好会のことなど考えるな。その気になればいくらでも調整は効くし、最悪どちらかが同好会を去ることになったとしても、それは想いを伝えない理由にはならんだろう?」
「う……それは、そうかもですけど……」
「第一な、お前、いまのままなあなあの関係を続けたとして……もし彼女が突然『この人と付き合うことになった』と別の男を連れて来たらどうする? 四六時中一緒にいるわけでもないのだろう?」
 その可能性が、ないとは言えなかった。
 なにせまりかさんだし。ちょっとした外出でもすぐ人と仲良くなっちゃう人だ。
「……そう、ですね。うん! 決めました! まりかさんに想いを伝えます!」
 まりかさんのことを特別に思ってしまっている以上、想いを伝えたい。
 問題は、どう伝えるかなんだけど。
「どう伝えようかな……」
 思わずそう呟くと、マサネさんは本気で呆れた顔をしていた。
「おいおい、お前は暦も見てないのか?」
「え?」
「あるだろう。絶好の日が」
 そう言ってマサネさんが指で示したカレンダー。
 その暦は、十二月を示していた。
「その日に遊びでもなんでもいいから誘ってみろ。それで断られるようならそもそも脈がないということだ」
「な、なるほど……! そして、ムードを高めた上で、想いを伝えれば……!」
 いける、かもしれない。
「どう高めるかは自分で考えるんだな。そこに関してはアドバイスもできん」
「はい! ありがとうございます!」
 その筋道を示してくれただけでも十分ありがたい。
 僕はどうやってまりかさんとのムードを高めるか考えて――ふと、思いついた。
「……マサネさん。もうひとつ相談、いいですか?」
 早速、思いついた内容を さんに相談する。
 準備を万端に整えなければならない。

 その日――クリスマスに向けて。

つづく

殺人プレイ『聖殺』 2


 その運命の日――僕はまりかさんと一緒に街を歩いていた。

 普段は一緒に街に出る時、まりかさんは小さいまま、僕の胸ポケットに入ったり、あるいは僕のナノマシンの特性で作り出した猟奇的な『ポケット』の中に入ってもらったり、そういうプレイの延長戦であることも多かった。
 けれど、さすがにこの日ばかりは、極普通の人間サイズで、一緒に街を歩いている。
「クリスマスはいいね。街全体が晴れやかで」
「そ、そうだね」
 前述した理由で、まりかさんと一緒に歩く機会というのは少ない。
 だからこうして一緒に歩くだけでも、ドキドキしてしまうのだった。
 特にいまのまりかさんは、双子たちが作って置いていったデザイン重視の服を身につけている。
 服に詳しくない僕にはどういえばいいのかわからないけど――ただでさえ美人なまりかさんが数倍は美しくなっていた。
 先ほどから擦れ違う男性の羨望の眼差しが痛いくらいだ。
 ずば抜けて美人のまりかさんに対して、僕はいたって平凡な外見の男だから『どうしてあんな美人をあんな男が連れているのか』と思われているに違いない。
 そういう意味では、ほんの少し優越感はあった。
(これで本当に彼氏彼女の関係になれたら……最高なんだけどなぁ)
 そんなことを思いつつ、僕はまりかさんと一緒にクリスマスの街を歩く。
 目指しているのは、今日のために予約していたレストランだ。
 料理も美味しければ接客も良く、大人の雰囲気抜群だというレストラン。
 ここに一緒に行こうと誘った時、まりかさんは即座に頷いてくれた。
 それだけ考えると、脈がないというわけではないはずなのだけど。
(……こうして寄り添うように歩いても、嫌がっては……いないと思うし)
 手こそ繋いでいないが、距離は普通の友達よりはずっと近い。ほんの少し近付けば腕も組めそうな距離だ。
 きっと受け入れて貰える。
 そう自分を奮い立たせてレストランへの道のりを歩く僕は、道中まりかさんが僕のことを優しく見つめていたことに気付かなかった。


 予約したレストランで極上の料理を堪能した後、食後のお茶が来る前に告白した。
 店員さんには事前に伝えていたし、個室だったので周りの目は気にしなくても良かった。
「ま、まりかさん! しゅ、好きです! 僕と付き合ってください!」
 緊張しすぎて声も震えてしまい、肝心なところを噛むし、情けない告白だったと思うのだけど、まりかさんは喜んで受け入れてくれた。
「ありがとう。やっと告白してくれたね」
「よ、よかった……やっと?」
 安堵しかけた僕は、まりかさんの言葉に目を点にしてしまう。
「うん。本当はずっと前に私から告白しようと思ってたんだ」
「ええ!?」
 思わず大きな声をあげてしまった。つくづく個室にしておいて良かった。
 まりかさんは苦笑気味に微笑む。
「でも水無くんって今時珍しいくらい律儀な人だから、告白は男性の方からするものだって思ってそうで」
 図星だった。
 もしまりかさんから告白されたとしても、喜んで受け入れてはいたと思うけど、自分から告白できなかったことに思うところはあったかもしれない。
(なんてこった……)
 元からわかっていたけど、僕はまりかさんに敵いそうにない。
「こんなに雰囲気のあるレストランに連れてきてもらえるとは思ってなかったけどね。ねえ、水無くん。このシチュエーションはどちらかというとプロポーズじゃない?」
「うっ。いや、確かにやりすぎかな、とは途中で思ったんだけど」
 思えば段取りを伝えた時、店員さんが微妙に苦笑いしていたのはそれが理由だったのだろうか。
 『ここまで来といてまだ付き合う前の段階なのかよ』って内心ツッコミを入れられていたのかもしれない。
 そう考えたら、急に恥ずかしくなってきた。
 顔が赤くなるのがわかる。普段は形すら変えられるのに、こんな時に限ってナノマシンは仕事をしてくれなかった。
 僕のそんな反応を、まりかさんが微笑ましいものを見る目で見ている。
「ふふふ。交際の申し込みでこれなら……結婚の申し込みの時はどんなシチュエーションを準備してくれるのかな。楽しみにしておくよ」
 まりかさんはそんな風に穏やかに僕をからかうのだった。
 本当に僕は一生まりかさんに敵いそうにない。
 決して、悪い気分ではなかったけれど。

 こうして、僕はまりかさんと恋人関係になることが出来たのだった。

 運ばれてきた食後のお茶を飲みながら、まりかさんが問いかけてくる。
「それで……気になっていたんだけど、もう聞いてもいいかな」
 告白の緊張から解き放たれ、ようやく落ち着くことの出来た僕は頷いた。
 まりかさんの目は、部屋の隅に置かれた僕たちの荷物に向いている。
「水無くんが持っていたその荷物……もしかして私へのプレゼントだったりするのかな?」
 期待にか、まりかさんの目が少し光っている。
 彼女らしいといえば、らしい。恐らくそれが『そういうもの』だと見抜かれている。
「あ、うん。そうだよ。僕たちらしく、殺人プレイに関係するものなんだけど」
 マサネさんに相談した時は、これを使ったプレイをしてクリスマスムードを高めてから、みたいなことを考えたけど、告白する前にプレゼントを渡すのは順序が違うかな、と後から思い直し、告白は直球勝負に切り替えたのだ。
 結果としては、良かったと思う。
 なにせ、このプレゼント……プレイ用の道具は、クリスマス気分は高めてくれるけど、ムードを高めてくれるかと言えば、そうではないかもしれないから。

 僕が荷物から取りだしたのは見た目――ただの白い袋だ。

つづく

殺人プレイ『聖殺』 3


 まりかさんはその『白い袋』を広げて、不思議そうに首を捻る。
「これがプレゼント……? 何か、特殊なものなのかい?」
 彼女の性格からして、宝石とか貴重なものを欲しているわけではなく、単にただの袋はプレゼントというには不適格だという意味だろう。
 実際、僕だってプレゼントと言われて極普通の袋に見える袋を渡されたら、純粋に困惑すると思う。
「うん。クリスマスに白い袋、といえば……サンタさんだよね」
 せっかくクリスマスなのだから、クリスマスに関係のあるものを贈りたいと思ったのだ。
「まりかさんはブラックサンタの言い伝えって知ってる?」
「なんとなくはね。良い子にプレゼントを配って回る普通のサンタとは別に……悪い子を連れ去ってしまうだとか、靴下の中に炭を詰め込むだとか……そんな話だったかな?」
「うん。大体そんな感じ。あとは悪い子のベッドに豚の臓物をぶちまけるとかいう話も有名だね」
 その伝承を参考にしたプレイを考えていた。
 僕は席から立ち上がり、まりかさんの側に立つ。白い袋を手にしたまりかさんは、どこか期待するような目で、僕を見上げている。
「食事も終わったし……あとは僕たちらしい殺人プレイをしながら帰ろう」
「ふふっ……言うと思った。つまり、私はこの袋に入れるくらいの大きさになればいいんだね?」
 袋にどんな仕組みがあるのか、まりかさんは聞いてこなかった。
 実際に味わうのがてっとり早いと考えているのだろう。
 まりかさんも席から立ち上がり、テーブルに手を突く。その手が、どんどん小さくなって行った。
 程よく小さくなったタイミングで、まりかさんは床を蹴ってテーブルの上に昇り――テーブルに重みが加わる前に、人形サイズの大きさに縮んでいた。
 小さくなることで脱ぎ捨てられた形になった服が、一拍遅れて床に落ちる。下着も含めたそれを、僕は手早く拾い集め、ほどほどに折り畳んで鞄の中にしまった。
 テーブルの上には、小さくなったまりかさんと、僕が渡した白い袋だけが残っている。
「さあ、今日はどんな殺され方をするのかな? たのし――みぃっ!?」
 不敵に言おうとしたまりかさんの声が途切れる。
 見れば、何の変哲もなかった白い袋が、自動的に動いて、まりかさんの身体をすっぽりと包み込んでしまっていた。
「さっそく動き出したね。取り込める大きさの人間に反応するように作ったんだ」
 白い袋に付けた、第一の機能――『自動捕食機能』。
 袋の中に納められる人型を完治すると、自動的に口が開き、その中にその対象を取り込もうとする機能だ。
 結果、突然襲われた形になるまりかさんは、普通ならしないようなすごい格好で白い袋に囚われていた。白い袋はまりかさんの身体にぴっちり張り付いているから、まりかさんのシルエットがハッキリ浮かび上がっている。
 形のいい胸や腰のくびれなどがばっちり浮かび上がっていた。
「ん、んんっ、んぐぅううッッ!」
 白い袋はただ捕らえただけではなく、まりかさんの身体に張り付き、ミシミシと音を立てるほどに締め上げていく。
 運悪く変な方向を向いてしまっていた腕が折れ、中途半端な位置になっていた片脚がひしゃげる。
 このまま放っておいても、全身を締め付けられたまりかさんは呼吸をすることが出来ずに死に至るだろう。窒息の前に身体が潰れるのが先かもしれないけど、死は免れない。
 一回死ぬまで放っておいてもいいんだけど、ただの道具に一から十までまりかさんの命を奪わせるのは、パートナーとしての僕の矜持が許さない。
 ゆえに、指先に意識を集中させ、指先を極細のナイフへと変化させた。

つづく

殺人プレイ『聖殺』 おわり

 指先に生やした極細のナイフを、まりかさんへとゆっくり近づけていく。
 白い袋に張り付かれるように包まれ、身体のフォルムを浮かび上がらせている彼女の、蠱惑的な腹部に狙いを定めた。
 極細のナイフは、布を貫通し、まりかさんの腹部に突き立つ。
「ッ! ングウウウッ!」
 突然お腹を刺されたまりかさんが、悶えて悲鳴をあげた。けれどその悲鳴はすべて白い袋が吸収してしまい、大きなものにはならない。
 さらに、ナイフを突き刺したことで、本来なら溢れてくるであろう血は全く流れ出さなかった。白い袋の表面に滲むこともない。
 これが僕の用意した袋の、特性第二の特徴。
 血や尿など、液体を全て吸収して、外に影響を見せない。さらに自己修復機能のようなものもある。極細のナイフを使ったからということもあるけど、ナイフで開いた穴はすぐに塞がり、真っ白な袋の外観を維持し続けるのだ。
 僕は抜き取った指先のナイフを、何度かまりかさんに向けて振り下ろした。そのたびにまりかさんは悲鳴をあげ、不自由な身体を捩って暴れる。
 ある程度身体を突き刺したら、最後の仕上げに彼女の眼球に狙いを定め、瞳を潰すようにして指先を押しつけた。
 そのまま奥まで押しこめばナイフは脳に達し、彼女は死んでいただろう。そうならないよう、慎重に眼球だけを潰す。
 ぷつり、と柔らかい眼球が潰れる感触が伝わってきた。
「フーッ……フーッ……」
 まりかさんの苦しげな声が白い袋の中から聞こえてくる。
 普段派手に殺されることに慣れている分、こういう地味な感じの殺され方には慣れていないのだ。
 けれど、殺人プレイに傾倒するまりかさんだからこそ、すぐにその苦しみが喜びに変わっていっているのがわかる。
「ふふふ……さすがはまりかさん。もうこの痛みに慣れちゃったかな?」
 痛み自体はナノマシンの制御でいくらでも調整できるとはいえ、どんな小さな痛みも受け入れる素養がなければ苦しいだけだ。
 殺人プレイ愛好家は皆、その適応するまでにかかる時間が極端に短いのが特徴だった。
(さて、一通り傷は作れたから……仕上げだね)
 僕は傷だらけのまりかさんの包まれた白い袋に、そっと手を当てる。袋の中に包まれた彼女の体温がじんわり伝わってきていた。
 もがく彼女の動きを感じつつ、僕は自分の手をナノマシンで調整し、手のひらの温度を徐々にあげていく。
 ヒーター並みの熱波が白い袋越しにまりかさんへと伝わって行っていた。
「ンン……ンッ、ムゥーーッ!」
 そうしているうちに、大人しくなりかけていたまりかさんが激しく藻掻き始める。
 事情がわからない人から見れば、何が起きているのか全くわからないだろう。
 白い袋に設定した最後の特性が発揮されているのだ。
 第三の特性・熱を際限なく吸収し、結果、内側にある物は発火する。
 同時に耐熱かつ耐炎構造になっているため、外から見た白い袋には全く影響はでていない。ちなみに燃焼するのに必要な酸素に関しては素通りするため、まりかさんは際限なく燃え続けることになる。
(呼吸は出来ず、けど燃える時には空気は通る……っていうのが本当に難しかったんだよなぁ……)
 ナノマシン技術がなければ、とても実現することは出来なかっただろう。本当に夢を叶えてくれる技術だ。
 それを言い出すと、そもそも殺人プレイ自体、ナノマシンの恩恵がなければ出来なかったけども。炭化しても復活出来るのはナノマシンあってのことだ。
 密閉された白い袋の中でひたすら燃え続けるまりかさん。
 そんなまりかさんを包み込む白い袋を、僕はズボンのポケットに入れ、荷物を持ってレストランを出る。
 傍目には一人で歩いているように見えるだろうけど、僕のポケットの中にはまりかさんがいた。
 白い袋越しに伝わってくる熱はじんわりと暖かく、カイロみたいでとても心地が良い。
(ああ、これは思ったより気持ちいいな。まりかさんの命が燃えてる感じ。すごくいい)
 実際まりかさんは白い袋の中で再生しては燃え続け、地獄の苦しみを味わっていることだろう。殺人プレイ愛好家の彼女は、ギリギリまで意識を残すように身体を調整しているから、自分の身体が炭化してボロボロになるのを自覚してから果てるかもしれない。
 僕はポケットの中のまりかさんの暖かさを感じながら、家路を急いだ。
 家についたら服を着替えるのもそこそこに、まりかさんの詰められた白い袋をテーブルの上に出す。まりかさんは完全に沈黙していて、もはや痙攣もしていない。
 僕は指先を鋭利な刃物に変え、その白い袋を外から裂いた。自己修復機能があるとはいえ、わざと大きく傷口を広げるように開けば、さすがにすぐに塞がりはしない。
 袋の裂け目からすっかり全身が炭化し、物言わぬ焼死体となったまりかさんが顔を覗かせる。
 ブラックサンタが悪い子にあげるプレゼントは『真っ黒な炭』だ。そう考えると、この状態のまりかさんは僕に対するプレゼントということになる。
(結果的に、僕へのプレゼントみたいになっちゃったな……まりかさんも楽しんでくれてたらいいんだけど)
 僕は白い袋をひっくり返し、炭に成りはてたまりかさんをテーブルの上にぶちまける。
 落下した時の衝撃でまりかさんの身体は粉々に砕け、テーブルの上を黒く汚した。
 その炭の塊を指でかき混ぜて時間を潰すこと暫く。ぶちまけた炭が蠢きだし、ひとつに集まったかと思うと、まりかさん本来の姿に戻っていく。
(炭になっても元に戻るスピードはそんなに変わらないな……むしろミキサーとかでぐちゃぐちゃにしたときよりスムーズかも)
 基本的にナノマシンの修復は、すべてを一から構築し直しているわけではない。怪我の程度にもよるけど、ある物はあるままに戻そうとすることが多い。損傷が激しくてどうしようもならない部分は一から作り出すので、全身が炭化した今回は全てを一から作り直したのでかえって処理が楽だったのかもしれない。
 その理屈はさておき、いつもより早い時間で復活したまりかさんが、ぱちりと眼を開けた。覗き込んでいた僕に気付くと、身体を起こし、ニコリと笑い――元の大きさに戻りながら、僕に抱きついてきた。
「うわわっ! ま、まりか、さん?」
 柔らかなまりかさんの身体が押し当てられ、さらに情熱的なキスまでされ、僕は思わず赤面してしまった。
 いまさらと思われるかも知れないけど、今日まで恋人の関係だったわけではない僕たちは、実は恋人らしい身体的接触はほとんどしたことがなかったのだ。
 プレイ中には、唇どころか全身触ってるし、丸呑みしたこともあるけども、それはそれこれはこれ。
 まりかさんはいつもの快活な笑顔で、楽しそうだった。
「相変わらず、水無くんの殺し方は一工夫あって楽しいね。燃えさかる火に飛び込んだことはあったけど、こう身体の内側も焼けるほどにじっくり熱を通されたのは初めてだよ」
「そ、それはよかった……」
 ぎゅっと抱きつかれていることに、心臓がドキドキしてしまう。彼女の柔らかな身体の間食が凄く心地よかった。
 もうお互いに照れるような間柄ではないのだけど、やっぱりドキドキしてしまうのは仕方ない。
「……ん? どうして眼を逸らしてるんだい?」
 僕の様子に気付いたまりかさんが、にやにやしながらそう問いかけてくる。明らかにわかってからかってきてるときのテンションだ。
「ねえ、水無くん。いつものプレイもいいけれど……折角恋人同士になったんだ。今日くらいは、普通に愛し合うのも一興じゃないかな?」
 耳元で囁くように言われ、僕の頭は気持ちいい刺激に痺れる。たまにはそういう日があってもいいだろう。
「……そうだね。じゃあ、ベッドに行こうか」
「ふふ。優しくしてね。……ベッドに行くのも初めてだねぇ
「そういえば、そうだね」
 普段まりかさんは小さくなっているし、ベッドだと広すぎるということで、上物のクッションで寝ていた。
 それなりに長く一緒に暮らして来て、ベッドで一緒に寝たこともないというのは、ある意味不思議な気がする。
(というか、実は呆れられたりしてないよね……?)
 いつまで経っても手を出してこないへたれだと思われてはないだろうか。
 そう不安に思ったのを見透かされたのか、まりかさんが言う。
「人の考えはそれぞれだけど、ちゃんと恋人関係にならないのに、身体を重ね合わせるような人だったら、私は君を好きにはなってなかったと思うよ。ちょっと愚直すぎる君だから、好きになったのさ」
「本当に、敵わないなぁ……まりかさんには」
 僕は抱き上げたまりかさんをベッドまで運びつつ、その頬にキスをした。
 まりかさんは優しい笑顔でそれを受け入れてくれる。

 こうして恋人同士になった僕たちは――それからも、殺人プレイ愛好会で、殺人プレイを続けるのだった。


~殺人プレイ 聖殺 おわり~

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