軽くスナップをきかせて描いた円の中に、彼女の首を収める。
背を向けていた彼女は一瞬だけ視界を横切ったそれを、不思議そうな目をして見ていた。
「――ぐぇっ!」
一瞬後、首に食い込むそれによって悶絶し始める。首に食い込むそれを外そうとしているのか、指をかけようとするものの、ワイヤーのごとく細いそれに指をかけることなんて出来ない。そもそも肉に食い込んでいてひっかけることなんて出来るわけがないのだ。
俺はさらに力を込めて左右に腕を引っ張る。両手に巻いたワイヤーが自分の肉に食い込まないよう、特殊なグローブで両手は覆ってある。
さらに締めあげられた彼女の口が勝手に開き、何かを口にしたようにも思えたけど、気道も頸動脈も何もかもが圧迫された状況では何を口にすることも出来ない。やがて頸動脈が圧迫されることで血流が完全に止まったのか、意識を失ったようだった。手足は勝手にぴくぴく動いているが、それは断末魔の足掻きだった。
彼女の反応がなくなったことを悟ると、俺はさらに渾身の力を込めてワイヤーを引き絞る。ワイヤーが肉に食い込む鈍い感触が手に伝わってくる。それをさらに引き絞ると、ついに彼女の首がワイヤーによって切断された。血飛沫をあげながら、彼女の首が地面に落ちて転がる。彼女の身体の方といえば、身体を制御する首を失ったことで力を失い、その場に膝をついてしまった。切り取った首の切り口から血が溢れ、彼女の来ていた服を汚していく。さらには死に至ったことで筋肉が緩んだのか、股間から生温かい湯気が立ち上った。
切断用のワイヤーだったし、こちらの腕力も増していたとはいえ、まさかここまで簡単に切断出来るとは想ってもみなかった。
俺はワイヤーの威力に感服しつつ、転がり落ちた彼女の頭部を拾い上げて、その切り口を彼女の首側の切り口に合わせる。そうしてしばらく動かずにいると、切り口同士が結合して、元のように修復される。さらに吹き出していた血も元通りに戻っていき、白目をむいていた彼女の目が元のようにまっすぐ前を向く。もうよさそうだと判断したところで彼女の頭から手を離す。
「……ぁっ」
喉が完全に修復したんだろう。小さく声があがった。状況を把握したのか、彼女の視線がうっとりとしたものになり、その手が治ったばかりの首筋を撫でる。
「……んー、結構気持ちよかった、です。けど、苦しくなってすぐ意識がなくなっちゃうのが残念ですね」
首を絞められた感想を無邪気に口にする栄巳ちゃん。
「俺としてもそれがいまいちだった……首が切断されるまで引いてみたはいいけども、君の反応がないとつまんないし」
「どうにかしないとダメですね」
スカートの裾を払いながら立ち上がり、彼女はのほほんとそう口にした。
「やっぱ、ワイヤーで締めるのがダメだったのかな」
首締めといえば某有名な仕事人だから、ワイヤーを準備してみたのだけど。
「もうちょっと太い縄のしたらどうでしょう? そしたら私も指かけて抵抗できますし、時間もかかって殺してる!って実感が出るかもですよ?」
キラキラした目で何言ってるんだろうか、この子は。
「いや……まあ、強く否定はしないけども、俺は別に特別殺したがりって訳じゃないからな……死ぬのを見るのは好きだけど」
「それって立派な殺したがりじゃないですか?」
笑う彼女は本当に爽やかで、こんな彼女が殺されたがりだなんて誰も思わないだろう。
今日も今日とて俺と彼女は殺人プレイに勤しんでいた。
~続く~